ポジティブ思考は旅館を救う?
当館は三階建て、エレベーターがなく、どうしても階段を使っていただくようになる。
口コミで多いのは、階段が多いので、「ご年配の方には不向き」という文言・・・。私はいままでに、この類の口コミを何度、目にしただろうか。
私はこの階段を、多い時で一日十数回、往復している。お客様のご案内だけでも多い日は7往復。
そりゃあ、エレベーターがあれば一番だとわかっているが、ないものはどうしようもない・・・。私たちを悩ます大きな課題でもあるが、こればかりはすぐに改善できるものではない。
でもこれを健康のためと言いながら昇降するのは、うちの70を過ぎた女将さん。仕方ないからかもしれないが発想の転換できるのはすごいと思う。
人には顕在能力と潜在能力という二種類の能力があるらしい。
顕在能力というものは、今、発揮している力。潜在能力というのは、まだ発揮されていない眠ったままの力だ。実は、人には97%もの潜在能力が眠っていて、それを発揮できれば可能性が増えるらしい。でも潜在能力の大半は、「思い込み」によるものが多い。例を挙げるとサーカスの象の話。これは大嶋啓介さんという方の著書から引用するとこうだ。
『サーカスの象は子どもの頃、足に鎖をつけて逃げないように動けなくされます。子どもの象は何度も鎖を引っ張って逃げ出そうとしますが、動けません。そのうち、子どもの象は「鎖=動けない」と、思い込み、鎖をつけられると引っ張ることをやめてしまします。こうやって育てられた象は、大きくなっても鎖をつけられると動けないと思い込んでいるのでおとなしくなるのです。本当はできる力があるのに、できないと思い込んでしまう。』
ということは、口コミに多い、「階段が多いのでご年配の方には不向き」というイメージは思い込みに過ぎないのでは?
「ご年配には不向き」だけを拾うとご予約に躊躇してしまいそうだが、こう考えるのはどうか?
自分は年を取ったと認めたくないので、「ご年配に不向きなら私には向いている」と思い込んでみる。
私自身、十数往復を毎日続けると膝も痛くなるはずだが、登山のトレーニングだと思い込むことによって健康を維持している。
もしかしたら、これは気持ちの持ちようなのか?
主人の発想で、階段の途中で休憩ができるように、ちょっとした思いやりを途中途中に点在させているが、それでもきつい!ってことであれば「思いやり」を壁一面に飾ってもよい!(イヤでも立ち止まることになるだろう(^^;)
それでも個人差はあるので、どうしても階段は・・・。というお客様もいらっしゃるのは否めない。だが「運動と思って一泊二日だけ階段を使ってみる」とか、「ご年配には不向きだと口コミにあったけど私には楽勝だったわ」など、思い込みや見方を変えて、忘れられないご旅行になっていただけたら私は嬉しい。
普通の旅館だけど、白滝を思い出す時の合言葉が「ああ、あの階段が多い旅館ね!」って記憶してもらえると、お客様にとっては、普通より頭1つ分だけ印象深い宿になれるのかな?と妙にワクワクしてしまう。
まさにポジティブ思考は旅館を救うのだ。